プロの研修講師を育成、支援する

プロの研修講師、インストラクターを育成する人財開発支援協会

 プロの研修講師への道

<その9>ワンランク上の講師を目指す

 

講演と研修、セミナー等の講義は、どこが違うのでしょうか?

講演は、一方的に自分の知識、経験を話すもの、講義は、自分の知識、経験を教え、理解させるもの、研修は、知識、経験を教え、理解させ、実行させるものだと私は考えています。

 

講演会の場合は、著名な先生の話を生で聞く、あるいは自分の聞きたい話を聴くと言うことが参加者の主目的ですから、内容や構成はあまり問われません。
これに対して研修は、どんなに良い講義をしても受講者に理解され、納得して実践してもらわなければ、何の価値もないものです。
たとえばマナー研修の場合、聴いた人がどんなにマナーを理解しても、その通り行動しなければ研修の意味があったとは言えないでしょう。

 

従って、受講者が納得し行動に移してもらうこと、「やってみようかな」と思わせるための内容、仕組み作り、仕掛け、テクニックや講師への信頼感が必要となります。

 

まず受講者に理解され、納得してもらうためには新しい事例、たとえ話、聴いた話を誰かに話したくなるようなエピソードなど、話の小抽き出しをたくさん持っていることが大切です。
これについては、「話のネタを拾う」で詳しく書きましたので、ここでは繰り返しません。

そして講師への信頼を獲得するためには、講義内容、構成はもとより、服装、立ち居振る舞い、話し方、テキスト、スライドすべてを総動員して、どれ一つ気を抜かないようにしなければなりません。

 

それでは一般の講義、研修の良否は何で決まるのでしょう? 
私は「受講者のレベルで決まる」と思っています。やる気のない受講者、嫌々集められた受講者、レベルの低い受講者などを相手にいくらベストパフォーマンスをみせても決して良い結果は出せません。そうした場では、一所懸命やっては返って逆効果です。
ある著名なベテラン講師は、数ある研修の中には「捨てゲーム」があると言っています。私は「消化試合」と称しています。

 

こうしたことを避けるためには、無料セミナーや受講料の安いセミナーには出ない、というのがベストの方法です。もちろん仕事が選べれば、ですが。社内研修でも全員強制参加の場合は、必ず嫌々来ている人がいます。もしそうした場に遭遇したら、一所懸命多くのことを教えようとせずに、一つでも役に立つ話を楽しく学んでもらえるように工夫する必要があります。そのためには、臨機応変の対応ができることとともに、まず何よりも空気を読む能力が求められます。

 

これに対して、高い受講料を払ってセミナーに来る人は、それなりのレベルの方ですし、講義や研修に期待をしています。社内研修でも希望者を募集して行われるものは同様の期待感を持っている方が集まっています。
こうした方々を相手にしないと、いくら一所懸命やっても徒労に終わることが少なくありません。

 

よく参加者リストを見て、こんなに詳しそうな人がたくさん来るのかと、びびる講師がいますが、実はそうした場が一番やりやすいのです。こうしたレベルの高い受講者は、たとえ講師よりも知識、経験があっても、必ず何か得るものを見つけられているものです。

 

次にプロといえる講師は、講義・研修に当たって何を持っているか、数千人の講師の講義を聴いてきた私の経験からお話しします。

 

まず、講義・研修は情熱を持って話すことが大切です。そのためには情熱を持って話せるテーマを選びましょう。与えられたテーマに情熱が持てないなら、断るか、それができないなら伝えたいことが見つかるまで研究・勉強しましょう。

 

話は聞いた人の印象に残る話し方、構成を心がけましょう。「こういうことを言うだろうな」と受講者が予想しているとおり話しても印象には残りません。ある程度、聴いている人に驚きを与えて、「どうして?」「なぜ?」と思わせます。受講者の頭にクエスチョンマークが浮かんだとき、そのときがあなたの話を一番吸収してもらえる状態なのです。
そして、受講者が納得していなかったら、的確な事例、例え話でわかりやすく説明していきます。

 

さらに上級編として相手の感情に訴える話をするという方法があります。感動的な話は相手の心に直接響きます。受講者を笑わすより泣かせられれば名人級です。噺家でも人情話で客を泣かせるのは笑わすより遙かに芸の力が必要なものなのです。

 

パワーポイントを使う場合は、見せるためのスライドを作成してスマートに見せる。これも「テキスト・パワーポイントスライドの作り方」でお話ししました。

 

これらは私が出会った数少ないプロと呼べる講師から学んだものです。すべてがすぐにできるというものではありません。ワンランク上の講師になるためにはこうしたらいいという一つの目標としていただければ幸いです。

 

長らくおつきあいいただきました「プロの研修講師への道」もそろそろ終わりに近づきました。次回、最終回は「たかがアンケート、されどアンケート」と題し、アンケートにまつわるお話をしたいと思います。

 

一般社団法人 人財開発支援協会では、ワンランク上のプロの研修講師を目指す方のために「研修講師育成講座」を開講しています。ベテラン講師4名でマンツーマン指導いたします。


© 2011 Ryuji Fukuda


 


執筆者:福田 隆二

 

セミナー主催会社を30年余り経営。 現在、CS研究フォーラム自動車産業研究フォーラムを自ら主宰するとともに、 東京大学大学院経済研究科 経営教育研究センター特任研究員として「ものづくり寄席」などを開催、東京大学グローバルCOEプログラムものづくり経営研究センターで「ものづくりインストラクター養成スクール」、法政大学ビジネススクール企業家養成コース「ワークショップ事務局」コーディネーター等も歴任。企業法務・コンプライアンスの研究会「ビジネス法務アカデミー」企画担当など研修・知的イベントのプロデューサー、コーディネーターとして幅広く活躍中。

35年を超える研修主催者としての経験による独自の視点から、目から鱗の情報を「研修講師育成講座」で提供している。

 


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