<その4>こんなにストレスのたまる仕事はない?!
研修は大勢の人間を相手に行う仕事。つまり講師は常に衆人環視のもとにおかれている。常に見られる存在である。受講者の目を意識しながら行うのが講師という仕事。それだけに気が休まる暇はない。ストレスも当然たまる。
しかも受講者にはいろいろなタイプがいる。全部が全部、素直で真面目な人とは限らない。反抗的な人、嫌々参加した人、寝てしまう人、私語する人、勝手に出て行ってしまう人、まったく発言しない人、等など。このような人々に対しても、個々に配慮しながら彼らを動機づけるのが講師の仕事。
受講者のことなどお構いなしに自分のペースで一方的に講義をすすめる人がいる。これでは講師としての存在価値はない。これなら機械でもできる。一方的にテープやビデオを流すのとなんら変わらない。さまざまな受講者に対して臨機応変に対応するところに講師としての存在価値がある。決められた時間、話しさえすればよいなどと思っているようではリピートなぞくるわけがない。
問題のある人は無視すればよいという意見もあるが、実際はそうもいかない。たとえば反抗的な人を無視すれば、ますます反抗的になる。寝ている人を放っておけば、受講者は研修中は寝てもいいんだと判断し、自分も寝るようになってしまう。
だから講師はスケジュールどおり研修をすすめなければならない反面、問題のある人に対しては個々に配慮しながら彼らを動機づけることができねばならない。研修時間は大幅にオーバーすることはできないし、あまり早く終わるわけにもいかない。だから予定どおり研修がすすむよう常に気を遣いながらも、受講者の反応も常に確認する。時間に追われながらも、諸々のことに気を遣わねばならないのだ。
たとえ気持ちはやきもきしていても、皆に見られている以上、笑みを絶やさず落ち着いて研修をすすめる。自分のネガティブな感情はおくびにも出さず自然体でふるまう。だからこそストレスがたまるのだ。生身の人間を相手にするからこそストレスがたまるのである。
だからこの仕事を長く続けていると、肉体的疲労よりもストレスからくる精神的疲労の方が大きい。特に長期出張の場合はホテルに戻っても一人きり、男性講師はストレス解消についつい酒に走ってしまう。旨いものを食べて一杯やって寝る。こんな日々を重ねるうちに成人病に罹ったりする。なんか自分のことを告白しているようだが・・・。
また暇なら暇で、このままで大丈夫か?生活できるのか?もう仕事がこなくなってしまうのではないか?といような不安がストレスの原因になる。家にいてもイライラしてつい家族の者に当たったりする。独立講師になったのはよいが、思うように仕事ができず、ストレスが高じて鬱になってしまった者さえいる。
いずれにしろ研修講師という仕事はストレスフルな仕事である。だからあまり神経質な人は向かない。楽天家の方が向いているだろう。落ち込んだ暗い講師の話などだれも聞きたくないのである。
研修という仕事は真剣勝負だが、真剣になっても深刻になってはいけない。
一般社団法人 人財開発支援協会では、ベテラン講師の本音からノウハウ、主催者側の講師を見る目まで多面的に学べる「研修講師育成講座」を開講しています。経験の浅い研修講師・インストラクターの方のブラッシュアップとしてもお役に立ちます。
次回は、人は研修講師をどう見てるか「研修講師のイメージ」です。
© 2014 Toshiharu Amemiya |