<最終回>自分を磨く
独立研修講師は孤独である。でも楽しいこともたくさんある。まず旅行好きには堪えられない仕事だ。私自身、北は北海道の網走から南は沖縄の那覇まで仕事で行った。札幌や長崎日帰りなんていうのも当たり前。タダで、否、お金を貰ったうえで日本全国を旅することができるのがこの仕事だ。
忙しいときなどは、札幌で仕事をしてその日のうちに福岡に移動し、それが終わったら仙台なんていうのもある。もう少しこちらの移動も考えて仕事をくれと言いたいところだが、依頼先がそれぞれ違うから致し方ない。
でもそこは考えようだ、折角初めての地に行くのだから時間のあるときは、前日朝から移動して観光することもある。だから考えてみると結構一人で観光したところもある。網走に行ったときは前日早めに行って網走刑務所や流氷ツアーを堪能した。もちろん観光の費用は自腹だが、折角現地までの交通費と宿泊代をみていただけるのだから、これを活用しない手はない。また前日、観光しておくことによって翌日の研修の話のネタができ、受講者との距離感が縮まることもある。
また、いろいろな地域に行くことにより、当然その土地ならではの郷土料理や地酒なども堪能できる。また、研修担当者が連れて行ってくれる時もある。時には温泉に入っておいしい料理に舌鼓をうち、これでお金をもらうなんて申し訳ないと思うときすらある。
まあそうは言ってもほとんどはビジネスホテルで白い壁を見ながら眠ることが多い。研修が立て込んでくると移動するのが精一杯で夕飯は電車の中でホテルに着いたら寝るだけなんていうのも結構ある。最終の飛行機や新幹線に間一髪間に合ったなどというのも多い。もっと余裕をみてスケジュールを組み立てればよいのだが、如何せん企業が研修をやりたい時期というのはだいたい重なるものだ。
だからこの仕事忙しい時期は忙しいが、暇な時期は暇なのだ。均等に仕事が入ればよいのだが、どうしても季節性があるため、忙しいときに目一杯稼いで暇な時期は充電に充てるようになる。私の経験でいうと一番暇なのは決算近くの2・3月だ。この時期はまず自治体はやりたがらないし、企業も決算対策でそれどこでなかったり、新入社員教育の準備に追われたりで、落ち着いて研修を実施することはできない。
そこで私はこの時期は今まで読めなかった本を読んだり、セミナーを受講するようにしている。ただ残念なのは、最近は受講しようにも同業者お断りと言われてしまうことがある。他人のノウハウを盗むつもりなどなく、ただ勉強したいだけなのにヘンに警戒されてしまうことがある。私の研修やセミナーはどんな人でもウエルカムなのだが、まあ気持ちは分からないでもない。
セミナーを受講するということは新しい知識を習得するだけでなく、講師にとって受講者になること自体がとても大切なのだ。受講者の立場になることにより、ついぞ忘れていた受講者の気持ちを思い出すことができる。講師としての独りよがりから抜け出すことができる。また受講者目線で講師を見ることにより見えてくるものもある。
もう自分はこれでいいと思ったら講師としての成長はとまる。世の中が日々変化しているのだから講師も日々変化しなくてはならない。10年前のテキストを今だに使う講師がいる。それで通してしまうその神経には敬服する。私などは昔の自分のテキストを見て恥ずかしくなることがある。もっとこうすればよかったと自己嫌悪に陥ることがある。でもそれはそれだけ成長しているという証でもあるのだ。
講師業を始めてしまったら自己啓発に終わりはない。
長い間、ご購読有り難うございました。
お読みになって、研修講師を目指そうと思われた方は、一般社団法人 人財開発支援協会主催「研修講師育成講座」にご参加ください。食えるプロの講師になれるまで、指導します。
また「研修講師育成講座」でお会いしましょう。
© 2014 Toshiharu Amemiya |
執筆者:雨宮 利春
(一社)人財開発支援協会 代表理事
1977年 青山学院大学経済学部卒 商社にて営業本部マネージャー等を歴任後、1989年 経営コンサルタント・研修インストラクターとして独立。
現在 コミュニケーション、対人折衝、クレーム対応、プレゼンテーション、リーダーシップ゚等の 技術指導で組織の人材開発を支援、各種企業団体等の教育研修事業・講演・
コンサルティング、 執筆等で活躍中。
2010年 一般社団法人 人財開発支援協会を設立、代表理事に就任。「研修講師育成講座」を開催するなど、後進の育成にも尽力している。
中小企業大学講師、一級販売士、産業カウンセラー
主要著書:「あいさつ上手になる本」、「パソコンプレゼンテーション入門」、「顧客を動かす『話す』 技術『聞く』技術」、「絶妙な『断り方』の技術」
、「絶妙な『クレーム対応』の技術」 、「だから、あなたの会社の『クレーム対応』は失敗する」他多数
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